Just Your Legal Partner ,Solicitor

司法書士 三 木   茂

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司法書士 三 木   茂

私は司法書士、三木茂です。
私は司法書士業務歴30年になります。開業当初(昭和63年)はほとんどの仕事は登記でした。バブル崩壊後現在では成年後見制度があり、簡裁訴訟代理権が付与され、業務内容は一変しました。
これら全ての業務をカバーしようとすると、はっきり言って大変です。大変な時代です。それでも町の法律家としては好き嫌いなど言っておれません。与えられた仕事を一つ一つこなして行くだけです。
それら日々のご相談や事件を記録して行きます。

新着情報

  • 2022.02.14 弊職事務所の登記等手数料を改定しました。

所有権移転登記(相続)手数料を値下げしました。

所有権移転登記(相続)手数料を値下げしました。

相続登記を義務化する法律が成立し、間もなく施行される予定です。相続登記を怠ると、過料のペナルティが科されることになりました。

そこで所有権移転登記(相続)手数料をさらに値下げして、基本料金を36,000円(税別)としました。

弊職事務所では、まずお客様からヒアリングして、どんな財産があるか、相続人は何人いて、遺産分割について合意ができているかどうか、など伺いながら手続きの手順をご相談します。

それらの情報に基づいて調査を開始します。相続財産の確定、不動産については名寄せの写しを取り寄せて漏れがないようにします。次に相続人の確定、被相続人の出生から死亡に至るまでの戸籍、除籍謄本を取り寄せてみます。

相続人、相続関係が分かったところで、相続財産をどのように分けるかあらためて協議、確認していただきます。

遺産分割について既に合意できていれば、その内容に沿った遺産分割協議書を作成し、皆さんから署名、実印押印を貰っていただきます。

これで準備完了、登記申請して、完了したら新しく権利書を作成します。

ところでご自分で相続登記する方も多いです。相続登記が義務化されたため、ますます増えていくものと考えます。このような方々のために手数料項目を新設しました。

登記申請のみであれば、基本料金は19,800円(税別)です。

市役所の市民課で、相続登記に使うからと申し出れば、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等は揃います。もっともごきょうだいの分は、ご本人に取っていただくか、委任状が必要です。名寄せの写しも固定資産税の証明窓口で揃いますね。こんな感じで、ご自分で取り寄せた書類をご持参ください。そうすれば上記の手数料で登記申請のみ承ります。もちろん立派な権利書も作成いたします。
安いですね。

詳しくは、登記等手数料のご案内のページで確認してください。

預貯金のロック解除手続を独立の項目としました。

今回所有権移転登記(相続)の次に、預貯金のロック解除手続という項目を新設しました。従来不動産の相続登記手続きと一括して処理しておりましたが、最近この手続きのみお願いしたい、と仰る方もいらっしゃる。例えば、専業主婦の方であったり、女性の方が不動産の名義を取得することは少なかったです。そんな方が被相続人となると、預貯金が主な遺産となります。
預貯金は消費寄託契約と解されますが、名義人の死亡にともない契約関係が終了となるため、相続手続をしてから解約し、残高の払い戻しを受けることになります。
仕事の内容は、戸籍謄本等を取り寄せ相続人を確定し、相続人全員で当該預貯金について遺産分割していただき、その内容に従って遺産分割協議書を作成し、相続人全員で署名押印します。一方戸籍謄本等に基づいて法定相続人情報一覧図を作成ます。これらの書類を金融機関窓口に持ち込んで、預貯金の払い戻しを受けます。
弊職事務所では、これらの手続の基本料金を23,000円(税別)としました。
預貯金がロックされてお困りの方、是非手数料一覧表でご確認ください。

遺言書作成のすすめ

ただいま皆さんに遺言書の作成についてご案内しております。
遺言書が書いてあったら、などと聞いたりします。
ひと昔前なら、ご夫婦に子供がなくて、ご主人が奥さんのために遺言書を書いたものでした。奥さんはご主人のごきょうだいに頭を下げて回らなくて済む。
一方、うちは遺言書を書くほど財産がない、と仰る方も多い。もちろん事業をされているお宅は後継者に全財産を相続させ、散逸しないよう対策しておられる。果たして遺言書を書いておくべきでしょうか。
最近は民法が定める均分相続の考え方が定着しております。個人の権利意識も高まっています。価値観が変化し、多様化してます。自分自身の生活を大切にしたい。子供たち一人一人の生き方を尊重し、遺産を子供たちが平等に分配する。これが最近の人たちのトレンドなのかなと感じております。
だったら子供たちに任せておけばいいじゃないか。おっしゃるとおり、なんですが、実際にはそんなにうまく行きません。
平等と言っても、親と同居していた子、都会に出て行った子、嫁に行った子、あるいは、自宅が欲しい子、現金が欲しい子、など事情は様々です。中には生前にまとまった生活資金を貰った子もいたりします。
子供たちばかりになって、子供たちは果たして冷静に話し合い出来るでしょうか。ほとんどの場合、自己主張するばかりで話になりません。けんかになって、きょうだいの縁を切るなんて事態に発展することさえあります。
そこで、お父さんが、お母さんが、遺言書さえ書いておいてくれていたなら、なんて恨み節の一つも漏れ聞こえて来ることになります。
この際、遺言書を書いてみませんか。遺言書は残された子供たちへのメッセージです。こうして分けるんだよ、その一言が大きいんです。事情は一変します。
作成するなら、公正証書遺言が断然お勧めです。間違いありませんし、すぐに使えます。ただし費用は12万円くらいかかります。もっと安くならないのかと仰るなら、法務局で保管制度が新設されました。自分で遺言書を書いて、法務局に預かってもらいます。一般の方が利用することを考えて、手続きが面倒くさい反面、簡単な内容のものに限られます。例えば、長男に全部渡す、とか。
費用は、公証人手数料や証人2人分の手当がいりませんから、例えば、弊職手数料3万3千円(税込)と収入印紙代3千900円で済みます。
ご家族の事情を伺いながら丁寧に進めてまいります。
生前に贈与して、元気なうちに渡してしまうこともできます。もちろん贈与税もかかりません。
ところで、おじいさんの相続登記は終わってますか。
お気軽にお問い合わせください。

離婚事件を受託する-嫁が娘を連れて実家に立てこもる

ある日つきあいのあるA社長から電話がかかってきた。A社長の知り合いの社長から相談を受けているがどうしたものかという相談だった。その知り合いの社長の息子が困っているという。子供ができてもうすぐ1歳の誕生日を迎えようとした矢先、お嫁さんがその子供を連れて実家に帰ってしまい戻ってこない。実家では義母さんが対応に当たり、当分の間別居した方がよい、娘もそう考えていると言って会わせてくれない。

弊職も全体のイメージがわかないので、とりあえず、ご本人同士の意思確認をすることを助言した。

数日後A社長から再び電話がかかってきた。実は自分の息子のことだと打ち明けてくれた。

直接息子さんと面会した。お嫁さんが実家に帰ったきっかけを尋ねる。お嫁さんが長女を歩かせていると転んでケガをした。まだ歩く練習を始めたばかりだった。それが悪いことにコンクリートの上だった。すぐにお医者さんに診てもらったが大事にはいたらなかった。息子さんがお嫁さんに、「芝生の上で練習すればいいのに」とか「もっと危機意識を持って」などとついこぼしてしまった。そうずるとお嫁さんの態度が急変し、反抗的な態度を見せるようになった。

長女の通院が一段落ついた2月下旬、長女を連れて実家に帰ってしまった。夫婦であればこれくらいのことは日常茶飯事?とまでは言わないが、よくある話である。

ところで長女の誕生日は3月10日。A社長や奥さんにとって娘は内孫であったから、初節句も長女の誕生日もとても楽しみにしていた。息子さんはそんな父母の気持ちを察して、3月2日から何度もお嫁さんに帰宅するようメールした。そのかいもなく3月3日ひな祭りはすっぽかされた。続いて誕生日、ケーキとプレゼントを用意して待っていたが、これもパー。さすがに捨てるわけにも行かず、息子と母親がお嫁さんの実家に届に行ったそうだ。

このようにお嫁さんが幼い子供を連れて実家に帰ってしまうケースが最近多い。こんなときお嫁さんは何を考えているのだろうか。見当も付かないが、夫としては悔しくて悲しいに違いない。

こんなときどうしたら。息子さんは今のところお嫁さんに長女を連れて帰ってきて欲しいと考えている。お嫁さんと直接会って話を聞いてみたい。それが実感だろう。取りあえず受託して、手立てを考えてみることにした。

離婚事件を受託する(その2)-弁護士から受任通知が届く

ひきつづき,私の付き合いのあるA社長の息子さん(以下、将大と仮名します)のお話。お嫁さんが長女を連れて実家に帰ったきり戻ってきません。

将大さんは初節句と誕生日をすっぽかされたことでカンカンに怒っていました。お嫁さんとはその後メールがつながるようになりました。お嫁さんからはやはり当分の間別居しようとの提案がありました。将大さんは、何せカッカしてますから、「別居は離婚と同じ」だと言い放って一歩も譲りません。勝手に長女(以下、彩菜と仮名します)を連れて出て行ったお嫁さんが何しろ憎らしくてなりません。いつかはお嫁さんがわびを入れてくると確信していたのです。「それじゃ、離婚したいんだな」と強気で責め立てます。

そんなやり取りが何度かあってお嫁さんもいい加減腹に据えかねたのでしょう。「わかったよ。離婚しよう。彩菜は私が育てる」と宣言されてしまいました。将大さん実は困ったと思いました。でも男に二言なし。「上等だ。もうご両親には話してあるんだろうな。「オレも親に話すよ。でも月末だからそんな話とてもできない。来月に入ってからだな」勢いだからもう止まりません。それでも何とか即日離婚だけは回避することができたようです。それでも容赦なくお嫁さんからメールが入ってきます。「いつになったら今後の手続の話できるの」「月も明けたことだし」将大さんはその都度何かかにか理由を付けては引き延ばしています。

そんなある日弁護士から1通の手紙が届きます。「私はお嫁さんから貴殿との離婚について受任した弁護士です。」晴天の霹靂とは正にこのことです。どうして弁護士なの。まだ離婚についてお互い具体的に何にも話し合ってないじゃないか。「お嫁さんはあなたとの婚姻を解消したいです。何か条件はありますか。」何でこうなるの。ケンカして離婚という言葉は確かに飛び交ったけど、そんなの売り言葉に買い言葉ってやつでしょ。本心から言ったつもりなんかない。「今後はこの件について私が承りますので、ご本人に連絡しないで下さい。」おいおい勘弁してくれよ。これまでお義母さんが代理人よろしくとやかく言ってきたけど、今度は弁護士かい。どうして離婚したいのかサッパリ分からない。ハッキリ言ってくれればいいのに。

どうやらお嫁さんは一大決心をしたようです。将大さんにとっては寝耳に水で、頭の中は真っ白。このお話、今後どう展開するのでしょうか。

離婚事件を受託する(その3)-夫婦関係調整(円満)調停を試みる

将大さんは怒り心頭怒りが収まらない。弁護士からは、やれ婚姻費用の分担だ、その算定のため給与明細を送れ、しまいには毎月末限り何万円送金しろ、などなど一方的に金銭要求を突きつけてくる。確かに第三者が見れば別居かも知れないが、将大さんに言わせれば、嫁がへそを曲げて娘を人質に実家に立てこもっているに過ぎない。そう強がってみても、やはり今までどおり3人で暮らしたい。自分のどこが悪かったのか。そうは言ってもお互い様だろ。何で自分だけ取り残されなければならないのか。それはやっぱり嫁が勝手に出て行ったからだ。どうどう巡りで全く収拾がつかない。夜布団に入ってもこのどうどう巡りが走馬燈のように頭の中で繰り返され寝付けない。睡眠不足で仕事に集中できない。そうこうしているうちに胃がキリキリ痛くなる。たまらず診察してもらう。胃潰瘍を発症していた。

2か月くらいそんな日々が続いた。嫁がどうしても離婚したいならしてもいい、そのかわり財産分与なし、慰謝料なんてとんでもない。こっちがもらいたいくらいだ。だけど離婚理由が知りたい。将大さんは自分なりに整理して一定の結論を求めようとしていた。そのためにはやはり直接でなくてもいいから嫁の真意を聞いてみたい。「知らなかった。弁護士がそんなことを言ってるなんて」みたいな答えを求めている訳でもないが。今はむしろ嫁の真意を確認して気持ちの整理をしたい。次の一歩を踏み出したい。そこで家庭裁判所に夫婦関係調整(円満)調停を申し立てることにしました。調停委員を通して間接的ではあるが嫁と会話できるはずだ。

離婚事件を受託する(その4)-調停第1回期日にむけて

調停申立をして3週間くらいすると裁判所から送達場所の確認とかアンケート用紙みたいな書類が送られてきた。手続の説明書も入っていて、結構たくさん入っている。読んでみると、DV(ドメスティックバイオレンス)はあったか、裁判所で顔を合わせても大丈夫か、住所が相手方に知れても良いか、など具体的な実情を聞いてくる。

でも一番助かったのは期日について希望をきいてくれたこと。お弁当の販売なので午前中は昼までめちゃくちゃ忙しい。午後3時からを希望すると、実際第1回期日からずっとその時間で運営してくれた。

嫁の方から離婚調停の申立と婚姻費用分担調停申立がなされており、こちらの円満調整調停と一緒に手続が進められるようだ。離婚調停の申立書を読んでみたが、日頃の細かな出来事が列記されておりしかもこれらを一方的に解釈してまくし立てている。弁護士の作文だと思う。何が何でも「婚姻を継続しがたい重大な事由」があるとまとめたいのだろう。取り上げている事実は普通の夫婦の日常でしかない。これらをどう組み合わせてみてもそんな結論を導き出すことはできない。自慢じゃないが嫁とケンカらしいケンカをしたことがない。嫁が実家に立てこもってから娘彩菜の初節句や初めての誕生日をすっぽかされた際にはさすがに腹が立って「離婚」という言葉も飛び交ったが、単なる売り言葉に買い言葉でしかなかった。

離婚原因事実があるかないか、そんなことはどうでもいい。嫁の真意が聞いてみたい、そのうえで自分なりの結論を出したい。精神的にも肉体的にもそろそろ限界だ。

離婚事件を受託する(その5)-調停第1回期日

第1回期日、調停委員に呼ばれて調停室に入る。調停手続は非公開であるので私は控室で待機します。入室すると将大さん1人だけで、正面には調停委員と思われる男女各1名計2人がすでに着席していました。調停委員がそれぞれ自己紹介したあと、調停の手続や進め方、また調停委員会の立場や役割についてお話がありました。

この点について秋武憲一先生の解説があるので引用します。

「調停を始めるに当たって、調停が自分たちで話し合いをして紛争を解決する手続であること、調停委員会は、公正中立な立場で、当事者から事情を聴いて、争点を明らかにするなどして、当事者が自主的に紛争を解決できるようにすること、調停は原則として月1回行い、2時間程度で終わることをきちんと説明することで、調停手続を理解してもらって、手続を円滑に進めるとともに、当事者に調停で紛争を解決するのは自分たちであるということを理解してもらうものです。これは当事者双方に同席してもらって、説明した方が効果的です。」

「本来は、当事者双方を同席させて行うべきですが、精神的に不安定で、相手と同席することに耐えられない当事者が増加していること、紛争のために、感情的になり、相手方と同席したくないと要望する当事者も増えていることなどから、現在においても、初回の手続説明を当事者双方を同席させずに、別々に行うことも少なくないようです。当事者双方に別々に説明することを前提に、出頭時間を30分程度ずらしている場合もあるようです。」(日本加除出版「新版離婚調停」P30)

調停委員によれば、嫁の側が同席を拒否したらしい。

この後本題に入り将大さんは調停委員にこれまでの結婚生活について話し始めたのでした。ケンカらしいケンカをしたこともないのにどうして即離婚なのか納得がいかないことも調停員に正直にぶつけてみました。最近はそんな事例が多いと教えてくれたが、意見を述べるわけでもなく、淡々と将大さんの話に耳を傾けてくれました。午後5時を過ぎて女性の調停委員は退席されたが、男性の調停委員はその後も30分くらい将大さんの話につきあってくれたそうです。

一方嫁側は、調停委員を通じて、離婚したいという意思をはっきり伝えてきました。

次回期日の日時を確認して第1回期日は終了しました。

離婚事件を受託する(その6)-調停期日を重ねる

嫁側は相変わらずいろいろと理由を付けて離婚を迫ってくる。その迫力に押されるかのように裁判所も円満調整から離婚調停へと舵を切ったように見えた。離婚でしかまとまらないと考えたのだろう。

実は将大さんは弁護士から請求を受けた翌月末から婚姻費用の分担金として毎月3万円を嫁に送金していた。毎月支払える額としてはこれが限度だと考えたからだ。

弁護士は毎月5万円を請求してきた。裁判所で使っている算定表(「簡易迅速な養育費等の算定を目指してー養育費・婚姻費用の算定方式と算定表の提案ー」に基づくらしい)によると、将大さんの年収が約370万円、0~14歳の子1人、妻が専業主婦の場合、毎月の支払額は4~6万円となっており、この中間を取って5万円ということらしい。

この算定要素からもわかるとおり、まず夫の給料やボーナスが大きく変動している場合、妻にパート収入がある場合、これらをどう評価するか議論があるだろう。また夫がアパート住まいである一方妻は実家に戻っており住居費がかからない事情をどう評価するか。算定表にもとづいて算出された額が4~6万円/月、年額24万円と幅があるので、いかなる事情をもってその額を具体的に決定するか。などなど疑問はつきない。将大さんもお嫁さんの希望で現在のアパートに住んでいるが、毎月の家賃が8万円であるにもかかわらず、いまや1人で住んでいる。

将大さんは直近の給与明細を裁判所に提出した。これまでの事情から通院のため遅刻や早退、欠勤もあってその額はかなり減額されていた。一方お嫁さんは、アルバイト程度に働いていたが、月額1~2万円程度の収入しかなかった。

将大さんは、お嫁さんは保母の資格を持っており、「私はその気になればいつからでも勤められる」と公言していたと主張するし、お嫁さんは将大さんがお父さんの会社に勤めているから給与明細も自分で勝手に作っているとしてその信憑性を疑っている。

これらを争点として2回の期日を過ごしてしまった。

離婚事件を受託する(その7)-調停期日を重ねる

期日ではこれまで懸案であったことやこの際言っておきたいことなどが争点として登場してくる。お嫁さんは車に乗って実家に戻りそのままそれを使っている。もちろん返せ返さないの話になる。将大さんは実家の営業車があるからどうしても返せとまでは言わないが、一般的に夫が通勤に使っていてしかもその1台しかないとなれば、非常に深刻な問題である。調停の場なのでそのままケンカに突入するのではなくやはり理屈の応酬になる。そこで車の所有権の帰属が争点となった。その車はお嫁さんの車を下取りに出して新車として購入し、残代金を将大さんがローンを組んで割賦返済している。お嫁さんは下取り車価格として50万円を主張する。査定して売却しようと言う。それを元手に自分の車を購入するつもりだ。将大さんは、離婚するかどうか決まってもないのに共有財産を分割するかのようなことはしたくなかった。こうして話をする中でお嫁さんの本当の気持ちを見極めたいと期待していた。一旦弁護士が入ってしまえば当事者同士の話し合いなどあり得ない。それは争いきるまで争ってなんぼの仕事なんだから。実はその車もお嫁さんの下取り車販売店で購入したものだった。その販売店から当時の資料を取り寄せてみると意外な事実が判明した。お嫁さんの下取り車は同じく残価設定方式でローンを組んで割賦返済していたが、完済となったので、下取りに出した。ところがキズやヘコミがあって残価を20万ほど割ってしまった。残価を割ってしまうと、その分が支払い不足となり、これを補填するため追い金が必要になる。そこでその補填額を新車価格に乗っけて将大さんがローンを組んだ経過があった。その車もお嫁さんが日常的に買い物なんかに使っているが、やはりキズやヘコミが目立っていた。その事実が明らかになるとバツが悪かったのかお嫁さんはあっさりと車を返却してよこした。

離婚事件を受託する(その8)-調停期日を重ねる

引き続き調停期日の際に争点として登場するのが収入の額です。現在お嫁さんと彩菜ちゃんは将大さんと別居しております。将大さんは収入がありますが、お嫁さんは出産を期に退職し以来専業主婦です。したがって収入がありません。そうなると将大さんは二人に収入を分けてあげなければなりません。これを婚姻費用の分担と言います。婚姻費用は衣食住費に留まりません。家族が同居していれば生活費は割安で済みますが、別居してしまうとそれぞれに住居費がかかるなどどうしても割高となってしまいます。お嫁さんは実家で住まわせてもらう一方将大さんは一人で高い家賃を払いながらアパート暮らしとなれば、将大さんに手厚く考えてあげるべきでしょうか。それでは将大さんはいくらお嫁さんに分配するべきか。もちろんお嫁さんも働いていればそれぞれいくらずつ分担すべきか、それにもとづいて一方が他方に対しいくら支払えばその分担額と一致するか、精算することになります。裁判所実務では婚姻費用分担額を算出するため算定表が使われています。離婚を前提として養育費の算定表もあります。サラリーマンと自営業者について年収額に応じて分担額が定まるようになっています。分担月額は確定額ではなく2万円の幅が持たせてありケースごとに柔軟に協議して算定することができるようになっています。

将大さんは実家のお弁当屋さんで働いているので従業員としての給料はもちろん決まっています。しかし働きの割にこれが安い。将大さんは、仕入から製造、配達、日々の営業から納入先の新規開拓、ひいては従業員の手配や採用まで、一人何役もこなしているのです。この待遇の悪さがお嫁さんが気に入らない点の一つです。

でも給料だけでは足りないとお母さんが判断すればそっと現金を渡してくれます。彩菜ちゃん出産の際には毎月10万円を給料とは別にお嫁さんに渡していました。お嫁さんはこれらの手当をも収入に加えて総額とすべきだと主張します。一方将大さんは会社が発行した給与明細書のとおりであると一歩も譲りません。逆にお嫁さんは保育士の資格を持っているのだから早急に就職してその収入を計上すべきであると促します。この点は両者譲らず平行線のままです。しかし合意不成立となってもそのまま終了するものではありません。当然に審判手続に移行し裁判所が分担額を確定することになります。離婚の合意がなされるのであれば、それを前提に、今度は彩菜ちゃんの養育費の協議に進んでいくことになり、その額について合意できなければ婚姻費用の分担と同じように裁判所が確定することになります。

離婚事件を受託する(その9)-そろそろ大詰め

関連する争点もほぼ解消し焦点はいよいよ離婚の合意形成へと向かいつつあった。お嫁さんは離婚意思が固く円満調整などには目もくれない。これでは裁判所調停委員も円満調整などまとめる自信はなかっただろう。それでも将大さんは離婚をいまいち決心できずにいた。将大さんはお嫁さんの真意が知りたくてこの円満調整調停を申し立てた。ところが手続に入っても状況は全く変わらない。相変わらず弁護士の言葉しか伝わってこなかった。お嫁さんの離婚意思が固いことは調停委員から何度も聞かされ分かっていたが、やはり「これこれの理由から離婚したい」とお嫁さんから直接聞きたかった。その理由が何であれそれで自分もあきらめられると将大さんは考えていた。

そこで将大さんはお嫁さんに宛てて手紙を書いてみることにした。言わば最後の訴えである。理由も告げず彩菜を連れて実家に帰り立てこもっている。突然弁護士を介入させ離婚請求してくる。お嫁さんのそんな手法に対し腹は立つが、彩菜のことを考えると、お嫁さんと何とかやり直せないものかなと思う。そんな気持ちから将大さんは率直に手紙を書いた。

日常生活の中でつい自分中心に物事を考えてしまいお嫁さんに対する配慮が足りなかった。これが第1点だ。実家のお弁当屋さんに勤務しているからどうしても朝早くから夜遅くまで仕事に振り回されてしまう。実際やるべきことはたくさんあって尽きることがない。お弁当屋さんの仕事は毎日のお昼が基本ではあるものの、休祭日の催しで注文を頂くことも多い。結局休みが取れない。仕事を言い訳にすることでお嫁さんに対する罪悪感もあまり感じなかった。彩菜が生まれてからは自宅で過ごす時間は増えたが、それは彩菜と一緒にいたいからだった(まあ子供ができてしまえば夫婦の間なんてそんなモンかなとも思うのだが)。

あともう1点は、彩菜のこと。離婚して父親がいなくなると友達にいじめられはしないか。思春期にぐれてしまわないか。お嫁さんが再婚して義父に暴行されるのではないか。妹でもできたら彩菜一人家族からはじき出されるのではないか。大人になっても、やはり片親で育ったからどこか一人前になれないのではないか。考え始めると心配は尽きない。もしもお嫁さんとやり直せるのなら、一緒に彩菜を育てていきたい。父親の責任を果たしたい。これら2点を特に訴えた。

書き上げた手紙はお嫁さんの代理人弁護士事務所に送付した。ところが当然と言えば当然のことながら、返事は全く帰ってこなかった。

離婚事件を受託する(その10)-やっぱり離婚合意できない

調停期日を重ねながら話もそろそろ煮詰まってきた。お嫁さん側はもちろん裁判所調停委員も、ここまで来たら、後は離婚合意でまとめるしかないとの空気感になってきていた。一方将大さんは腹が決まらない。期日中一度もお嫁さんと同席したことがなかったから、直接話をする機会が全くなかった。最後の訴えのつもりで書いた手紙も出したっきり返事が帰ってこない。お嫁さんから直接離婚理由を聞きたいという気持ちは今も変わらない。理解できないわけではない。今裁判所で争っているのだから。でも何か腑に落ちない。

結婚して彩菜が生まれて家族三人仲良くやっていたじゃないか。

何が不満なのか。別居の前後はよくケンカもした。そんな時「その神経質なところ、どうにかならないの」なんて言われちゃったけど、それが離婚理由?半分は性格かも知れないけど、もう半分は仕事のせいかな。いざ仕事となるとお客商売だから一瞬たりとも気が抜けない。日頃からのお付き合いが一番大切。ひとたび外に出れば会う人一人一人がお客様予備軍だから。これが営業だと考えている。一日中仕事しているようなものだからいつも神経質になっているかも知れない。これが悲しいかな現実。これって仕事にかまけてる?お嫁さんに対する配慮が微塵も感じられない?確かに壮かも知れない。

やはりここら辺に問題がありそうだ。あらためて考え込んでしまう。でも何が何だか分からないまま離婚するのはイヤだ。そんなことで彩菜を片親にしてもいいのか。そんなこと許されないはずだ。やはり最後は彩菜のことが気がかりだ。

将大さんはそういうわけで結局離婚に合意しなかった。自ら申し立てた夫婦関係調整(円満)調停事件、お嫁さん側が申し立てた夫婦関係調整(離婚)調停事件ともに不成立となった。

 

離婚事件を受託する(その11)-離婚調停の総括

将大さんは調停期日を振り返って考えている。結局お嫁さんとの関係を整理できなかった。人間同士のことだから白黒はっきりつけられないことはよく分かっている。だけど夫婦関係が破綻に至ったことはまぎれもない事実である。二人の相性がよくなかったのだから破綻してしまったのか。もうひと工夫すればうまくいったのか。自分なりに整理しておかないと次の一歩が踏み出せないように思う。

将大さんは自分がしっかり働けばお嫁さんは当然ついてくるだろう。夫婦の距離感なんてお嫁さんが取ってくれるはずだ。彩菜のことは奥さんに任せておけばいい。将大さんはこんな風にこれまで考えて来た。それは将大さんが見てきた父母の姿でもあった。実は将大さんお母さんのことを尊敬している。お弁当屋さんという家業を手伝いながらも自分や姉さん達を立派(?)に育ててくれた。明るい性格で人当たりが良く従業員達からも信頼され父社長を長年陰ひなたに支えてきた。将大さんはお嫁さんがお母さんのようになってくれればいいなと密かに思っていた。実際お嫁さんを見初めたのも、スポーツウーマンで勝ち気、元気で明るいところに惹かれたからだ。

お弁当屋さんは朝早くから夜遅くまで忙しい。お嫁さんはそんな仕事が好きになれなかった。義父はサラリーマンで定時に出勤し帰宅していた。土日祭日はもちろんお休み。有給休暇もあった。だから家族で旅行したりして余暇を満喫していた。お嫁さんはそれが普通と考えていたに違いない。妊娠が分かると義母が近くの総合病院の産婦人科の女医さんを紹介してきた。お嫁さんの実家はその病院の近くだから、お嫁さんは実家を拠点に定期検診のため通院したり買い物したりするようになった。お嫁さんもその先生を気に入ったようだった。無事彩菜が生まれてからもその生活スタイルが変わることはなかった。

自分が実家のお弁当屋さんを継ぐんだという考えが中途半端だったかも知れない。確かに自分自身大変な仕事だと感じていた。一方長男なんだから継がざるを得ないかとも考えていた。正直自分の考えがまとまらず揺れていた。この優柔不断なところがいけなかった。それを見透かすかのようにお嫁さんはじわりじわりと実家で過ごす時間が増えていった。彩菜を連れて行けば小言を言われることもない。ちょうど出産子育てと初めての経験で大変な思いをしていただろう。不安でいっぱいだったかも知れない。そんな時にこそしっかりとリードしてあげるべきだった。将大さんは今そんな風に反省している。

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